音に漂う香りの話


大学一年生の冬、初めての海外。
静かに降りしきる雪が見える部屋で、生まれて初めてショパンという音楽に香りを感じました。今日は、そんなお話。


この地に足を運ぶまで、私は漠然とショパンというものを弾いてきました。先生に言われた通りに抑揚をつけて、まるでそれしか答えがないと思い込んでいるかのように、ただひたすら真似をして。なぜなら、ショパンをよく知らなかったから。ポーランドとはどんな国なのかも知らないでショパンを理解できるはずもなく、あてもない道をヨロヨロと歩いていました。もしかしたら、その時はこれが正解だと思ってたのかもしれません。だって自信満々に弾いていたから…笑

そんな私がポーランドへと渡り、衝撃的な香りを嗅いだのが大学一年生の時。香りと言われてもよくわからないですよね、すみません。でもポーランドの香りがしたんです。土地に対して香りというものが実在するのかはわかりませんが、冬の香りだとか、雨の匂いだとか、そんな類のものと言えばいいでしょうか。お世辞にも華やかとは言えない、土が混じったような冷たい香りが。もちろんこれは私の感覚ですので、他の人はまた違った香りがするのだと思います。

さて、その香りですが、私がそれを感じたのはポーランドへ降り立ったその瞬間ではないのです。そうです。最初に書いた通り、レッスンの最中、静かに紡ぎ出される先生の音から香りがしたのです。なに言ってんだって話ですよね笑 でも本当にその時だったのです。たった2分弱の短い曲に、ポロネーズでもマズルカでもない、ほぼポーランド要素0のエチュードに、ただ震えました。

そのレッスンを受けた日から、私はその曲ばかりを練習し始めました。あの香りを忘れないように自分に刻もうと、ひたすら何度も。他にも見てもらう予定だった曲を放って。

おかげでその曲しか上達しませんでしたが、香りは私の鼻の奥に残り、今ではこれだと思った演奏を耳にすると、かすかに漂ってきます。その香りを頼りに出会った今の師匠は、この旅がなければきっと見つけることなど出来なかったでしょう。

あの日のたった一度のレッスンで、私の人生は変わりました。私も、誰かに変化を与えられるように日々努力していきたいです。
あの日、練習中に見つけた可愛い雪だるまを載っけて、今日はこの辺で。

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